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生物分析

主に水生生物および生息環境について分析し、その結果を用いて各種考察を行います。
特にバラスト水中の生物分析は、当社の強みが発揮される分野です。専用の分析室を備え、ISO/IEC17025:2017に基づく国際水準の厳正な管理のもと運用しています。

生物分析

調査(業務)において試料は、バラスト水中、海域から淡水域および干潟域の調査地点等において収集されます。得られた試料は、生物量の計数と種査定に用います。試料の採集方法や分析方法は、調査(業務)目的によって異なります。例えば、プランクトンの調査であると、対象生物の採集に適した目合いのプランクトンネットを用い、得られた試料の分析には顕微鏡が用いられます。また、調査(業務)によっては、対象生物の生死判定も行います。
バラスト水中の生物分析は、特に当社の強みが発揮されている分野です。対象とする生物は、細菌類、植物プランクトン、動物プランクトン、海藻・海草、二枚貝・巻貝類、甲殻類、魚類といった水中の生物全般です。

  • 船舶バラスト水の分析業務
  • 海水・河川水の生物分析・同定業務
  • 生物移動および分布域広域化の解析(外来生物含む)
  • 写真:生死判定の例。緑色の蛍光は活性があると判断
    生死判定の例:緑色の蛍光は活性があると判断
  • 写真:プランクトンネットによる調査対象生物の採集
    プランクトンネットによる調査対象生物の採集

船舶バラスト水が環境に及ぼす影響

バラスト水とは、船舶の安定性を確保する目的で、船舶が空荷時に“おもし”として船内(バラストタンク)に積載する海水あるいは淡水を指します。このバラスト水には、水だけでなくその中に生息している水生生物も含まれていて、水生生物の移動および分布域拡大機構の原因のひとつとなっています。
船舶周辺の水は、荷降ろし港において荷降ろしの進行にあわせて船内にバラスト水として取り込まれ積載されます。船内に取り込まれた水(バラスト水)は、荷積み港において、バラスト水が荷積みの進行にあわせてその港内に排水されます。この時、バラスト水中の生物も一緒に排出されます。
バラスト水によって移動した水生生物が移動先の地域に住み着くことにより、人の健康、海洋環境、経済に対する被害が世界各地で発生し報告されてきています。

  • 図解:バラスト水による生物の移動
    バラスト水による生物の移動

水生生物の移動を防除するための国際的な取り組み

バラスト水を介した水域生態系の攪乱や様々な社会被害を引き起こす可能性のある水生生物の移動を防ぐため、2004年2月に国際海事機関(IMO)において、「2004年の船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約」(バラスト水管理条約)が採択されました(2017年9月発効)。この条約では、バラスト水排出時に含まれる生物量について基準(D-2規則)が設けられており(下表)、条約発効後は新造船だけでなく既存船にも順次適用され、バラスト水処理設備の設置が義務付けられています。

排水基準 D-2規則

最小サイズが50 µm以上の水生生物 * 10個体/m3未満
最小サイズ50 µm 未満, 10 µm 以上の水生生物 * 10個体/ml未満
指標細菌 大腸菌 250 cfu/100 ml 未満
腸球菌 100 cfu/100 ml 未満
コレラ菌
(セロタイプ O1あるいはO139株)
1 cfu/100 ml未満, または動物プランクトンのサンプル1 cfu/g 未満(湿重量)

*いずれも“viable organism (増殖可能生物)”のみ対象

日本で唯一バラスト水中の全ての生物分析の認定を受けたISO/IEC17025試験機関

ISO/IEC17025は、試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項の国際標準規格です。当社の認定範囲は、「バラスト水の従属栄養細菌試験」「大腸菌群及び大腸菌試験」「腸球菌グループおよび腸球菌試験」「コレラ菌および毒素産生性コレラ菌試験」「バラスト水のプランクトンLサイズグループ試験、プランクトンSサイズグループ試験」、すなわち、バラスト水中の生物に関する分析の全てのカテゴリーとなっています。我が国において、バラスト水中の全ての生物分析に関するISO/IEC17025認定をされた試験機関は当社のみです。

  • 写真:当社分析室での分析風景
    当社分析室での分析風景
  • 画像:ISO/IEC17025認定証
    ISO/IEC17025認定証

生物分析の高度な知見を活かした各種業務

生物の越境移動、希少生物の分布、バラスト水に関連する会議(国際会議を含む)や委員会の運営支援を行います。一部の委員会では、弊社のメンバーが委員会の主査を務め、事務局と協力しながら委員会を主体的に運営しています。
その他、生態系保全に関するフィールド調査や文献調査、また、調査結果から得られた情報を基に、環境系イベントの講師や、教本・標本の作製等も行っています。

  • 干潟域における生物調査業務
  • 海域・汽水域における生物調査業務
  • 生態系保全会議の運営やアドバイザー業務
  • 生態系保全イベントでの講演
  • 生態系に関する教育教本・標本の作製
  • 写真:樹脂標本
    樹脂標本
  • 写真:干潟での調査
    干潟での調査

主な実績

業務名 年度 委託元
バラスト水管理システム型式承認申請業務及び試験業務 毎年度 民間企業多数
クロマグロ産卵海域で採集された動物プランクトン試料の分析業務 2021年度 (国研)水産研究・教育機構水産資源研究所
船舶バラスト水規制管理条約におけるバラスト水処理設備の承認及び検査に関する国際基準に対応するための調査研究 2018,2020年度 国土交通省
ラムサール条約湿地藤前干潟底生生物調査業務 2020,2021年度 環境省 中部地方環境事務所
バラスト水管理条約に関するデータの分析業務 2020年度 一般財団法人
東京湾における外来生物等情報収集補助業務 2018年度 海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所
改正G8ガイドラインに関する我が国の今後の戦略に対応するための企画・立案 2017年度 国土交通省
G7ガイドラインに基づくリスク評価とG8ガイドラインへの対応戦略に関する調査研究 2016年度 国土交通省
G8の改正に係る我が国の今後の戦略に対応するための企画・立案検討業務 2015年度 国土交通省
バラスト水管理手法検討業務 2015年度 環境省自然環境局
バラスト水管理条約への適合支援 2015年度 (一財)日本海事協会
船舶バラスト水規制管理条約に基づくG8ガイドラインの調査研究 2015年度 国土交通省
日韓におけるバラスト水の移動に関するリスク評価に係る調査 2014年度 国土交通省
日本におけるバラスト水の移出入実態等に関する調査 2012年度 国土交通省
船舶バラスト水等に含まれる水生生物の自動計測装置の開発研究開発 2006~2008年度 (財)シップ・アンド・オーシャン財団

某農業水利事業 海域影響調査業務

サンゴは様々な生き物の住みかとなり、産卵場所を提供するなど、海の生態系において重要な役割を担っている生物です。南西諸島の島々では、陸域の開発事業が周辺のサンゴ礁へ及ぼす影響が心配されます。

沖縄県の某島で計画されている農業水利事業による海域への影響を評価するため、事業の開始前、途中段階、そして終了後に現地調査を行い、様々な種類のサンゴの生息・分布状況のほか、サンゴと共生している海藻・海草類、底生生物、魚類、甲殻類などの出現状況、対象海域の水質や底質など、多岐にわたる項目を調査しました。

  • 水質調査のための採水
  • 潜水によるサンゴの生息調査
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統合河川環境整備(印旛沼)

印旛沼はかつて水草の宝庫でしたが、流入する水質の悪化、護岸や特定の種の異常繁茂等により多様性が失われていきました。これを再生することによって生態系の回復と水質改善をめざす取り組みが千葉県や学生ボランティアなどによって行われています。
当社では、異常繁茂しているオニビシや特定外来生物・ナガエツルノゲイトウの除去、かつて印旛沼に生息した水生植物の系統維持(育成・管理、移植実験)等の保全業務と、その効果のモニタリング調査を行ってきました。 モニタリング調査では、下記のような内容を実施しています。

  • ドローン等による植生状況概観調査及び植生図の作成
  • 水質調査
  • 魚類・甲殻類調査、生物多様性調査
  • 事業年度:2017,2019~2021年度
  • 事業主:千葉県印旛土木事務所、千葉県成田土木事務所
  • 特定外来生物・ナガエツルノゲイトウの除去
  • 魚類調査
  • ナガエツルノゲイトウの除去と魚類調査
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水草園関連施設基本設計

印旛沼は千葉県の北西部に位置し、飲料水の供給源としてだけでなく、美しい景観や豊かな生態系を育む「恵みの沼」として人々に愛されてきました。しかし、急激な都市化や、治水や飲料の安定確保を目的とした開発によって水質や生態系が悪化し、2007(平成19)年度には、全国湖沼水質のワースト1となってしまいました。
そこで2010年3月「印旛沼水循環健全化計画」が策定され、今日に至るまで実行計画に基づいた様々な取り組みが行われています。当社でもこれまでに複数の事業を担当しています。 取り組みのひとつに、水草の「系統維持」があります。かつて印旛沼に繁茂した水草を再生させ、それを維持することで水質や生態系の改善を図ることをめざすもので、この活動を広く知ってもらおうと水草園が作られました。当社は、この水草園において、子どもたちの自然体験や環境学習、市民団体や研究者の活動、レジャーなど、積極的な利活用を可能とする歩廊施設等の詳細設計を行いました。

  • 事業年度:2017年度
  • 事業主:千葉県印旛土木事務所
  • 動線計画
  • 歩廊施設のイメージ
  • 観察デッキのイメージ
  • 観察デッキの平面図
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海岸保全施設詳細設計業務

茨城沿岸の磯原地区海岸の海岸保全施設(護岸・堤防)は、多くは平成10年代に築造・改修が行われたもので、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)後、津波や高潮に対してさらに対策検討が必要となっていました。
本業務は、東北地方太平洋沖地震後に県の方針として示された「目指すべき堤防高」を踏まえて海岸保全施設の機能強化を図るため、既設護岸の現況を把握するとともに、磯原海岸の対象地域における海岸保全施設の詳細設計を実施したものです。経済性、施工性、供用性、景観、環境等について総合的な検討を加え、工事に必要な設計を行いました。

  • 事業年度:2014年度
  • 事業主:茨城県高萩工事事務所
  • 既設の護岸施設
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尖閣諸島自然環境基礎調査事業

尖閣諸島は、石垣島の北方150kmにある国境離島群で、沖縄県石垣市の一部です。アホウドリ、センカクツツジ、センカクモグラに代表される貴重な動植物が分布し、周辺海域も豊富な漁場となっており、学術と産業の両面で貴重な自然生態系が形成されていますが、海洋ごみやヤギによる食害等によって脅かされています。保全には正確なデータが必要ですが、中国等が自国の領土と主張していることで、上陸や周辺海域での環境調査は困難な状況にあります。そこで、当社では石垣市からの委託を受け、既存の文献調査や衛星画像解析等によって得られた情報をデータベースとして整理するとともに、広く国内外向けの周知資料等(パンフレット・映像・パネル・ジオラマ等)を作成しました。その成果は、現在、石垣市のユーグレナ離島ターミナルに開設された「石垣市尖閣諸島情報発信センター」等で展示されています。

  • 事業年度:2014年度
  • 事業主:沖縄県石垣市
  • 尖閣諸島・魚釣島
  • 魚釣島の衛星画像解析による正規化植生指標(NDVI)植生図
  • 尖閣諸島自然環境データベース
  • 尖閣諸島のジオラマ
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地域自然資産法による保全・管理・活用事業、竹富町地域自然資産法の事業に係る運用委託業務

沖縄県八重山郡竹富町にある竹富島は、人口約350人の小さな島です。赤瓦屋根の家々、琉球石灰岩でできた石垣、白砂の道に代表される島の風景は、沖縄を代表する原風景であり、中央部の集落は重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。この美しい島は近年の観光客急増の影響を受けて、まちなみの荒廃が懸念される状況となり、島の人達は保存活動に立ち上がりました。当社は竹富町の委託を受け、我が国初の地域自然資産法の適用及び活動と、今後の活動主体となる一般財団法人の設立運営の支援を行いました。

  • 事業年度:2017年~2019年度
  • 事業主:沖縄県竹富町
  • 竹富島のまちなみ
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